街づくり関心

 「自治体の憲法」とも言われる自治基本条例を制定する動きが、県内の市町村にも広がっている。4月1日には、新たに南相馬市西会津町で施行されたが、住民にとってどの程度メリットがあるのかは未知数だ。(宍戸雄一郎)

 会津美里町は今月1日、自治基本条例制定に向けた基本方針を決めた。行政活動への住民参加手続きを具体化する個別の条例を増やしながら、慎重に基本条例の内容を検討する。

 「より開かれた行政に」との議会の意向を受けて、昨秋から作業部会で基本方針の原案づくりをしてきたが、議論の過程では「なくても困らないのでは」との声も上がっていた。「本当に町にとって必要なルールは何かということで悩んだ」。町総合政策課の弓田秀樹課長は振り返る。

 北海道ニセコ町の基本条例では、町民への情報提供や会議公開の制度を明文化。以降、各種条例の制定・改廃の際に原則、住民説明会が開催されるなど「何事もオープンになった」(町企画課)。一方、理念にとどまる基本条例も多く、「憲章とどう違うのか」という声も少なくない。

 32条からなる「町まちづくり基本条例」を施行した西会津町。町まちづくり政策室は、最大の収穫として「住民を交えた議論を重ねた過程」を強調する。町民と議員、町職員ら50人による「まちづくり委員会」を組織し、2年4か月かけて検討。委員会の様子はケーブルテレビで町内に放送された。同委員会副会長を務めた自営業田崎真平さん(61)は「行政の下書きのないところから議論をして、街づくりへの関心が高まった」と話す。

 一方、三春町の伊藤寛前町長は、自身の引退後に検討が始まった基本条例(05年10月施行)の原案を批判する文書を町に出したことがある。条文の「町民は(中略)まちづくりの活動においては自らの発言と行動に責任を持つよう努めなければならない」などの文言に違和感を覚えたからだ。

 各自治体の基本条例にほぼ共通するのは、住民に対しても“責務”や“役割”を規定している点だ。これには「住民をコントロールしようという行政側の発想」との批判もある。

 だが、財政の悪化で行政が担える範囲が縮小する中、住民が街づくりの主体であると自覚する意義は小さくない。

 西会津町の基本条例策定に協力した三菱総合研究所の川村雅人チーフプランナーは、「住民がお上任せの意識だったら、基本条例をつくる意味はない。つくるかどうかから住民が議論し、つくった後も、まちづくりにどう生かされているかを住民自身がチェックしていくことが必要だ」と指摘している。

自治基本条例■ 2000年の地方分権一括法施行で地方の権限と責任が拡大したのを受け、01年に北海道ニセコ町が全国に先駆けて施行。全国各地の自治体がそれぞれの実情に合わせて追随した。多くが、情報公開や住民参加を基本原則として掲げている。県内では、会津坂下町が03年に施行したのを手始めに、10市町村で制定している。

(2008年4月10日 読売新聞)

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